アスリートを指導するならスポーツ心理学に関する知識があると良いでしょう。スポーツ心理学は心と精神の状態がパフォーマンスに与える影響を検証する学問で、アスリートのメンタルや緊張などをコントロールする術が身に着けられます。
この記事ではスポーツ心理学の歴史や、学ぶことで得られるスキルや職業、資格などを解説します。スポーツ心理学に興味がある方は、参考にしてください。
スポーツ心理学とは、心と精神の状態がスポーツにどのような影響を与えるのかを研究する学問です。
心と精神の状態によってパフォーマンスに影響がでるため、心理状態を改善すればスポーツのパフォーマンスが向上する可能性があります。
反対に、スポーツをおこなうことが日常生活になんらかの影響を与える可能性もあります。スポーツ心理学では心理状態とスポーツの関係だけでなく、スポーツと日常生活の関係も研究します。
スポーツ心理学の歴史と現状を順番に解説します。
スポーツ心理学はヨーロッパを中心に始まった学問です。1879年にヴントがドイツのライプツィヒ大学に開設した心理学研究室が始まりといえます。
日本においては、ヴントに学んだ松本亦太郎(まつもとまたたろう)が、スポーツ心理学の先駆者的な存在です。帰国後に京都帝国大学に精神動作学研究室を開設しました。
一方で、日本でスポーツ心理学に関する学会が設立したのは1973年です。そのため、日本では、スポーツ心理学は比較的若い学問とされています。
日本におけるスポーツ心理学は、おもに次の4つの研究分野にわかれています※1。
カテゴリー | 概要 |
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運動学習および制御 |
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スポーツ社会心理研究 |
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健康スポーツの心理 |
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競技の心理 |
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なお、カテゴリーごとに分類されているからといって、それぞれに特化した研究だけが行われている訳では無く、分野横断的な研究もされています。
スポーツ心理学は未解明な部分も多いですが、スポーツの発展のために重要視される学問です。そのため、パーソナルトレーナーやスポーツ指導者などを目指す方は積極的に勉強しておくと良いでしょう。
※1 出典:Ceek.jp Altmetrics「わが国のスポーツ心理学の現状と課題」
スポーツ心理学を学んで得られるおもなスキルは以下のとおりです。
上記を順番に解説します。
メンタルトレーニング技法とは、心と精神の状態をコントロールする能力を高めるスキルです。
緊張や興奮のレベルが高過ぎても低過ぎても、理想的なパフォーマンスを発揮できません。メンタルトレーニング技法では自己の現状を理解し、課題に対する対処方法を身につけることでパフォーマンス向上を目指します。
メンタルトレーニング技法はいくつか方法があります。たとえば、呼吸法は代表的なもののひとつです。
息を吐くときは吸うときの倍くらいの時間をかけて、ゆっくりと吐くことがポイントです。リラックスできるため、日頃から練習しておくと試合会場や競技場などの場面で役立ちます。
スポーツ心理学を学ぶことで、上記のようなメンタルトレーニング技法のやり方を理解し、実践できたり、指導できたりするようになります。
心理学を学ぶことで、選手の心理を分析して、モチベーションやパフォーマンスを向上させる指導方法が身につけられます。
たとえば、個々の選手に合った声掛けや指導を継続して行えれば、普段の練習のモチベーションを上げることが可能です。
また、的確な指導方法が身につけば、選手の緊張を緩和させて実力を発揮させることも可能となります。
選手の精神状態はシチュエーションによって異なり、選手自身でも言語化できないケースがあります。
スポーツ心理学では集中力やプレッシャーなどの心理を学び、感情や思考、行動をマネジメントする方法を研究します。そのため、スポーツ心理学を学ぶことで、選手の精神状態を言語化するといったサポートが可能です。
選手だけでなく、ジムに通う方やスポーツ教室で練習する子どもなどの感情や思考を言語化する際にも役立つため、パーソナルトレーナーを目指す方におすすめのスキルです。
スポーツ心理学を活かせるおもな職業は以下のとおりです。
上記を順番に解説します。
臨床心理士やカウンセラーはクライアントのメンタルヘルスのサポートをおこなう仕事です。
臨床心理士とは、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施する試験に合格した方が、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて人間の心の問題にアプローチする職業です。
カウンセラーとは、クライアントの心の悩みを聞き、専門家としての視点から指導や援助をおこなう職業です。
臨床心理士とカウンセラーはいくつか違いはありますが、両方ともメンタルヘルスのサポートを提供している仕事です。スポーツのパフォーマンス向上を目指す学生や、社会人の心と精神の状態を分析する場合などに、スポーツ心理学が役立ちます。
スポーツリハビリ療法士とは、理学療法士の資格を取得してスポーツ選手のリハビリテーションや傷害予防に携わる仕事です。
怪我をしている選手に対して治療計画を考え、実施し、リハビリテーションの指導をおこないます。それだけではなく、復帰後にベストな状態で競技ができるようにコンディショニング指導をおこなうことも仕事に含まれます。
スポーツ選手のメンタル面でのコンディショニング指導をおこないたい場合には、スポーツ心理学を学ぶことが必要です。
パーソナルトレーナーとは、クライアントとマンツーマンでトレーニングの指導をしたり、栄養管理などをおこなったりする仕事です。
トレーニングを受ける方の目的や体質にあわせてプログラムを提案する必要があるため、一定以上の知識や技術が求められます。近年では、パーソナルトレーナーを目指す学校やトレーナー育成スクールなどが開設されています。
パーソナルトレーナーとしてプロスポーツ選手を相手にする場合は、スポーツ心理学が必要だといえるでしょう。
スポーツ心理学に関する資格は以下のとおりです。
上記を順番に解説します。
スポーツメンタルトレーニング指導士とは、日本スポーツ心理学会が認定している資格です。スポーツ選手に対して、パフォーマンス向上のためのメンタルトレーニングを中心とした指導や相談を提供できるという証です。
取得要件や取得にかかる費用は以下のとおりです。
取得要件 |
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取得までの費用 | 審査料:10,000円 受講料:5,000円 最終審査料:5,000円 登録料:30,000円 |
なお、学会認定資格ではありますが、基礎要件に大学院修士課程修了が含まれています。一定以上の研究業績や研修実績、指導実績などを獲得する必要があるため、取得難易度は高い資格になります。
JTA公認スポーツメンタルトレーナーとは、日本トレーナーズ協会が認定している資格です。
取得要件 |
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取得までの費用 | 認定コース:合計17,280円 養成コース:受講料37,800円 |
出場する選手がベストな状態で競技できるよう、メンタル面でのコンディション調整のサポートを行える証です。
すでにパートナートレーナーやスポーツジムインストラクターなどで活躍している方は認定コースを、未経験の方は養成コースを受けて合格すれば資格を取得できます。
メンタルトレーニング検定とは、一般社団法人日本メンタルトレーナー協会が認定している資格です。
取得要件 |
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取得までの費用 | 3級検定料:3,300円(税込) 3級申請料:4,950円(税込) |
パフォーマンス向上、目標達成など、結果を出すためのさまざまな知識やスキル、プログラムなどを理解していることが証明されます。
メンタルトレーニング検定は3級からスタートし、2級、1級と上がるごとにカリキュラムの内容がより実践的となります。メンタルトレーニングに役立つスキルを学べるため、スポーツに関する仕事を目指す方は1級に挑戦しましょう。
スポーツ心理学に関する資格の勉強方法は以下のとおりです。
上記を順番に解説します。
スポーツ心理学を基礎から学ぶなら専門学校や大学に通うと良いでしょう。カリキュラムにもよりますが、資格取得を目指せるだけでなく、ほか分野に関する勉強もできます。
とくに、スポーツメンタルトレーニング指導士は基礎要件に大学院修士課程修了が含まれているため、取得を考えている方は適切な学校への進学を検討しましょう。
資格取得に特化したトレーナー育成スクールでもスポーツ心理学を学ぶことができます。
専門学校や大学に比べると、入学金や授業料などの費用がおさえられたり、卒業までの時間が短かったりすることが特徴です。また、トレーナー育成スクールによっては、夜間コースに通える場合があるため、社会人でスポーツ心理学を学びたい方にも向いています。
スポーツ心理学は、心と精神の状態とスポーツのパフォーマンスの相互関係に関して研究する学問です。スポーツ心理学を学べば、アスリートのモチベーションや緊張などの不安定な精神状態をコントロールする技術が身に付く可能性があります。
また、民間資格ではありますが、JTA公認スポーツメンタルトレーナーやメンタルトレーニング検定などのスポーツ心理学に関する資格はいくつかあります。パーソナルトレーナーなどのスポーツに関する仕事を目指す方は、専門学校や大学、トレーナー育成スクールに通って取得を目指しましょう。
ASPトレーナースクールでは、パーソナルトレーナーにおすすめの資格取得を目指すカリキュラムがあります。
スポーツ心理学を含め、パーソナルトレーナーを目指している方に必要な知識や技能を身に着けられます。スポーツ心理学やパーソナルトレーナーに興味がある方は、まずは無料体験授業を受講してはいかがでしょうか。